恋文の揺籠/恋文の棺桶
 恋の駆け引きをするいわゆるラブレターは、やはり電子メールに取って変わっているのだろうか。
 学校でのラブレターの受け渡し方法で、定番のシチュエーションがいくつかある。登校時や下校時、
机に入っていたり下駄箱に入っていたり。放課後、ある場所に呼ばれて行くと、呼んだ人とは違う人
に突然渡されて、本人は黙って帰ってしまったり・・・。
 やけに小さく丁寧に畳まれた手紙は、開けるのも少し時間
がかかり、読むまで、期待と不安でドキドキしたものである。
「こ、これは告白文だ」あまり気に留めていなかった娘から
でも、ものすごく嬉しかった。そして翌日からは、その娘の
顔を直視できなくなるのだった。

 また逆も然り。「ふ、ふられた・・・」やはり翌日からそ
の娘の顔を直視できなくなった。

 電子メールのように、一瞬で送信受信ができ、すぐ確認で
きてしまうのでは、このようなドラマは味わえないだろう。
 ○のラブレターは、隠すように引き出しの奥へ大事にしまい、また出しては読み返して心
を熱くさせられた。まるで揺籠を揺らす様に、引き出しを押したり引いたりして、恋を育て
ていた。
 ×のラブレターは、粉々に引き裂いて丸め、ゴミ箱に投げ入れた。ゴミ箱は棺桶の様なもの、
そして燃えるゴミの日に出棺されて行く。
 今でもアナログなラブレターのやりとりをしている人がいたら、この作品の子守唄を聴かせ
て恋文を育て、フラれた恋文は葬送行進曲を聴かせて冥福を祈ってもらいたい。