『右脳の蝶、左脳の蝶』

七宝・

1998年、第32回日本七宝作家協会展 東京都知事賞

 

自分にとって、書物は大きく分けると2種類、「読む本」と「描く本」がある。

高校を卒業するまで読書が大嫌いで、

宿題などで強制的に読まされても頭の中を蝶のように舞うばかりで一向につかみ取れない。

上京しての浪人生活では部屋にラジカセが一つあるだけ。暇つぶしに古本屋で1冊30円程の本を買って読んでいた。

最初はやはり頭の中を舞っているばかり だったが、そのうち、何匹かに1匹は左脳にとまる蝶が出てきた。

昔嫌々読んでいた蝶までとまらせることができる左脳へ進化していた。  マンガ家を目指した時もあった。

つまらない美術予備校に行く時携帯していたスケッチブックにも、マンガばかり描いていた。

そのうち、頭の中の右脳の周りにはマンガばかりが舞うようになった。

近くの 田んぼにいたプラナリアという不思議な生物が好きで、

それを擬人化したキャラクターを主人公にして、ストーリーをいくつも考えていた。

参考書の角を使って パラパラアニメを描いたこともあった。

しかし、大学に入学してからはほとんど本を読むこともマンガを描くこともなくなり、

今ではどちらの蝶も全て飛んで いってしまった。