『収集家の鱗粉』

七宝・ 銅・銀

1999年、富嶽ビエンナーレ入選

 

タモ(網)と虫カゴを持って、野原や山をかけまわっていた少年時代。

学研の図鑑と共に子供向け科学 玩具が流行した。中でも「昆虫採集セット」は刺激的だった。

いろいろなメーカーが同じ様なものを出していたが、基本的なセット内容は同じで、

虫メガネ・ピンセット・メス・注射器・緑の液体入ボトル・赤い液体入ボ トル。

緑の液体は防腐剤、赤の液体は殺虫剤と説明書きがあった。

虫カゴいっぱいに採ってきた昆虫に片っ端から赤い液体を注射するが、なかなか死なない。

何度か針を刺しているうちに動かなくなる。

その 後、片っ端から緑の液体を注射し、

母の裁縫道具から拝借したマチ針で虫達を洋菓子の箱などに留めて、標本風なものを作って満足していた。

標本にした昆虫は、数週間で腐ったり虫に喰われたりして、異臭を放ち始め、結局捨ててしまった。

大人になってから調べてみると、赤と緑の液 体は99%が水で残りは食紅などの色素だったことを知り、

愕然とした覚えがある。

無知な子供達は皆同じ様に騙され、同じ様に大人の作った流行に乗ってしまう。

そして、その世代の流行のデータとして標本にされてしまうのだ。