『恋文の揺籠』

七宝・ 銀・銅・真鍮・オルゴール

2003年、第37回日本七宝作家協会展奨励賞

 

恋の駆け引きをするいわゆるラブレターは、やはり電子メールに取って変わっているのだろうか。

学校でのラブレターの受け渡し方法で、定番のシチュエーションがいくつかある。

登校時や下校時、机に入っていたり下駄箱に入っていたり。

放課後、ある場所に呼ばれて行くと、呼んだ人とは違う人に突然渡されて、本人は黙って帰ってしまったり・・・。

やけに小さく丁寧に畳まれた手紙は開けるのも少し時間がかかり、読むまで期待と不安でドキドキしたものである。

「こ、これは告白文だ」あまり気に留めていなかった娘から。でも、ものすごく嬉しかった。

そして翌日からは、その娘の顔を直視できなくなるのだった。

また逆も然り。「ふ、ふられた・・・」やはり翌日からその娘の顔を直視できなくなった。

電子メールのように、一瞬で送信受信ができ、すぐ確認できてしまうのでは、このようなドラマは味わえないだろう。

○のラブレターは、隠すように引き出しの奥 へ大事にしまい、また出しては読み返して心を熱くさせられた。

まるで揺籠を揺らす様に、引き出しを押したり引いたりして、恋を育てていた。

×のラブレターは、粉々に引き裂いて丸め、ゴミ箱に投げ入れた。

ゴミ箱は棺桶の様なもの、そして燃えるゴミの日に出棺されて行く。

今でもアナログなラブレターのやりとりをしている人がいたら、この作品の子守唄を聴かせて恋文を育て、

フラれた恋文は葬送行進曲を聴かせて冥福を祈ってもらいたい。